江藤勲の音楽夜話/第十ニ夜

語り/江藤勲 聞き書き/青山弦

ベーシスト江藤勲が語る音楽のあれこれ

同じ音でも、どこで弾くかでセンスが分かれる

あるとき、スタジオ仲間から、「江藤さんの音は、同じCでも、音がどこか違うね!」と指摘されたことがある。ギターやベースは、同じ音を出すにも、いろいろなポジションの押さえ どころがある。どのフレットでどの弦を押さえるかによって、音程は同じCでも、タッチの感覚や、音のレスポンスに、それぞれ微妙な違いが生まれてくる。譜面には音符やコードの表 記はあっても、どこのポジションでその音を出せ! という指示まではされていないのが普通だから、どう音を表現していくのかは、ミュージシャンに委ねられている。その選択で、ベ ーシストのセンス、フィーリングの違いが、にじみ出てくるのだ。

Willie Weeks(ウイリー・ウィークス)は、Donny Hathaway(ダニー・ハザウェイ)のバンドでブレークしたベーシスト。名盤『Donny Hathaway /LIVE』での彼の演奏は、実に素晴らし い。リズムを刻みながら、流れるようにメロディを奏でるというベースならではの特性を、いかんなく発揮している。そのダイナミックな展開、〝ドライブ感〟は、まさに一聴に値する 。
アルバムにおさめられた、マーヴィン・ゲイの名曲「What’s Going On」 ここから聴くことが出来る。

ちなみにこのセッションのギターは、PACO1977のメンバーにはお馴染みの、Phil Upchurch(フィル・アップチャーチ)。ご覧のホームページ「PACO」のロゴの「O」の右横でディ・ア ンジェリコのギターを弾いているのが、ミスター・アップチャーチだ。現在、PACO店内には、彼の名を冠した貴重なギター(Vestax)が展示(非売品)されている。
ウイリー・ウィークスは大変な才能だが、彼が素晴らしいのは〝セッション・ベーシスト〟の域を越えることなく、常に仲間と音楽を愉しんでいることだろう。その姿は、まさに〝 粋〟である。
今夜の最後に、面白い音楽の聴き方をアドバイスしよう。「このベース気持いいな!」と思う曲と出合ったら、そのセッション・ベーシストをメモしておき、次からその人を軸に楽曲を 探してみると、意外な発見があるものだ。リーダーの名義はさまざまに違っても、不思議と自分のフィーリングに合う音楽が見つかる確立は高いだろう。