江藤勲の音楽夜話/第十一夜

語り/江藤勲 聞き書き/青山弦

ベーシスト江藤勲が語る音楽のあれこれ

社長というよりも、総務部長のベーシスト

1969年に、私はビクターから二枚のリーダーアルバムを出していた。

  • 『ゴールデン・エレキベース』(69年) 江藤勲とザ・ブラック・パンサーズ
  • 『エキサイティング・エレキベース』(69年) 江藤勲とピックアップ・セブン

これを聴いたポリドールのプロデューサー杉本氏から、「ウチでもベースを前面にだしたアルバムを」と申し出があった。自身もベーシストだった杉本氏の熱意に、背中を押されるように『ベース!ベース!ベース!』シリーズがスタートしたのは、70年のことだった。
杉本氏の気持はありがたかったが、私の気持は少々複雑だった。その気持をひとことで表現すれば、「自分は社長向きの性格ではないな!」という思いだった。「社長」とは、自分がセンターに立ってスポットライトを浴びる役目である。そうした思いを抱いたのには、ベースという楽器の特性も関係しているだろう。ピアノやギターならいざ知らず、ベースは、それ自身が前に出るように考えられた楽器ではない。音楽の構成を家の構造に例えれば、本柱を支える礎石の役割がベースである。

そう考えると、ベースは、私の性格に大変によく合った楽器だった。
スポットライトの後ろにひかえて、思う存分に社長に個性を発揮してもらう〝サイド・マン〟という役が、自分のベスト・ポジションだと悟った。しかも特定バンドの〝サイド・マン〟ではなく、セッション・ミュージシャンの私の場合は、社長が日替わりである。連日、さまざまな個性の社長に仕えなければいけない。会社で例えれば、さしずめ〝総務部長〟だろうか……遅まきながらリーダーアルバムを手がけて、はじめてこうした自分の性格を知った。
リーダーアルバムのレコーディングに際しては、ベースを前に出しても、全体のバランスが崩れないように、相当に特殊なアレンジをしないといけなかった。そこで編曲には、大御所、前田憲男氏や、鈴木邦彦氏、川口真氏などの助けを借りて、なんとかレコーディングに漕ぎつけた。
『ベース!ベース!ベース!』シリーズは、「江藤勲とケニー・ウッド楽団」名義で、洋楽、邦楽のインストを全部で6枚リリースした。またポニー(現ポニーキャニオン)からも『SOUND SPECIAL ’70 ベースでGO!GO 』という同系統の作 品をリリースした。
スタジオ仲間の石川晶/d、杉本喜代志/g、飯吉馨/p、水谷公生/g、猪俣猛/d、石松元/d、大原繁仁/key、栗林稔/keyなど、腕ききの面々が毎回集って、私を前に出してくれたが、総務部長の私は、最後までどこか居心地が悪かった。懸命に盛り立ててくれた、みなさん、ゴメン!