江藤勲の音楽夜話/第十四夜

語り/江藤勲 聞き書き/青山弦

ベーシスト江藤勲が語る音楽のあれこれ

復刻ORENDER Bass/オレンダー・ベースギター

エレクトリックベースの「オレンダー」が、PACO1977から復刻された。
先ごろ開かれた製品発表会(2013年9月)で、そのサウンドを聴いた読者もいるだろう。
私が初めてオレンダーを手にしたのは1963年ごろのことだ。ブルーコメッツを一時的に抜けたベーシスト高橋健二氏と入れ替わりで私が加入した際に、高橋氏からアンプとともに譲り受けたベースがオレンダーだった。高橋氏は65年に再加入されるが、その折には、ファーストマンのベースを使用し、オレンダーは、ブルーコメッツ退団後も江藤がそのまま弾くことになった。
かつて自分の演奏していた楽器が新たに復刻されるのは、ミュージシャン冥利に尽きる。再び楽器を手に出来る悦びもさることながら、このベースを求める現代のベースマンがいることに感謝したい。そうしたひとりで、復刻オレンダーのオーナー第一号となった酒井秀一さんから、オレンダーの来歴情報が寄せられたので紹介しよう。彼はベースを演奏するだけでなく、楽器そのものにも深い興味を持ち、コツコツと調べている。私よりもオレンダーの系統変化に詳しいのだ。以下<・・・>内は、酒井さんのコメント。

<元祖オレンダーは、TEISCO(テスコ)社製のベースギターだ。製品化にあたっては、米軍キャンプにあったフェンダー社/プレシジョンベースを撮影、実物大に引き伸ばし採寸コピーしたと言われている。しかし細部の仕様には異なる部分も多い。最も大きな違いは、フェンダー製がボルト・オンネックであるのに対し、テスコ製はセットネックであること。またボディサイズが、オレンダーは小振りである。テスコ社製を私(酒井)は所有していないので資料からの推測になるが、テスコではカスタムのオレンダーをもとに、2系統の量産機種を製造している。ピックアップがオレンダーと同一構造のプレシジョンタイプのEB-18。もう1系統は、より高級機種として発売された、ジャズベースタイプのNB-4。NB-4はテスコ独自のヘッド先端アールが強調されており、江藤氏が数々の名演をされた元祖オレンダーに、すでにその萌芽を見ることが出来る。>
<さて、PACOの2013年復刻モデルを弾いての印象だが、これは凄い。小振りのボディから想像出来ないほど、豊かなサウンドがする。アンプにつながずにナマ音で弾いてみると、楽器本体が鳴っているのがよくわかる。マホガニー材をボディに使用した軽さも特筆もので、ショートスケールのネックとあいまって、非常にプレイヤビリティに優れている。ネックにブランド・ロゴはなく、江藤勲氏が直筆サインをしてくれるのもファンには堪らない。音楽の一時代を築いたレジェンドをリスペクトするという音楽文化が日本には希薄だが、このベースこそ、そうした音楽文化を体現する2013年の復刻版といえるだろう。>

酒井さんどうもありがとう!
ミュージシャンにとって楽器は伴侶ともいえる存在だ。そんなかつての伴侶の末裔が、今度は若いミュージシャンの手で新たなサウンドを紡いでいく。そう考えるだけで、なんとも豊かな気持になる。

最後に情報をもうひとつ。
音楽ライターのガモウユウイチ氏による丹念なディスコグラフィ解説
「オレンダーを聴く100枚」を下記で読むことができる。
ベーシスト 江藤勲のホームページ